韓国の対北政策

韓国

大統領選の結果5月からは保守政権が誕生することになった韓国。そんな韓国だが、政権交代によって対北政策はどうなるだろうか?今回はそんな韓国の対北政策について取り上げていきたいと思う。

・政権交代により北は暴走

・北は核実験する気満々

・北朝鮮は手詰まり

・北朝鮮の追加制裁で中国は期待できない

・対北朝鮮政策は3軸政策

・ユン氏は中国に妥協するのか

・米韓同盟のこれから

1.政権交代により北は暴走

3月24日の北朝鮮によるICBM(大陸間弾道ミサイル)発射は、2017年11月29日の「火星15」発射以来1576日ぶりのことであり、18年4月の米朝首脳会談の直前に宣言したモラトリアム(核実験とICBM発射の猶予)の約束を破ったものである。これは文在寅政権が5年間推進した「朝鮮半島平和プロセス」の終焉を意味する。金正恩総書記が18年に約束した核実験・ICBM発射モラトリアムは、文在寅大統領の平和業績の核心であった。今回のミサイル発射は、任期末まで朝鮮半島の平和プロセスを進展させようと努力した文在寅大統領の「レッドライン(越えてはいけない一線)」を越えたということである。文在寅大統領は同日、緊急国家安全保障会議(NSC)を主催して「今回の発射が、金正恩国務委員長が国際社会に約束したICBM発射猶予を自ら破棄したものとして、朝鮮半島と地域、そして国際社会に重大な脅威をもたらし、国連安保理決議に明らかに違反した」と述べ、重大な懸念を表明した。

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 おそらくだが北朝鮮がこのタイミングでICBMを発射したのは韓国の次期大統領が保守政権にて誕生することが確定したのが理由だろう。韓国の保守派は当然反北であり、今までのような甘い対応を取ってくれるわけではないからだ。また今回の選挙はびっくりするくらいの接戦であり、実際に通るかどうかはさておき不正選挙だと騒げば法廷闘争に持ち込めただろう。そうすれば北朝鮮もひとまず法廷闘争が終わるまでは高みの見物を決め込んだのかもしれない。しかしイ・ジェミョン氏はあっさりと敗北を認め、アメリカ大統領選のような混乱は起こらなかった。それがまだ文政権中なのにも拘らずICBMが発射された理由だろう。

北は核実験する気満々

 北朝鮮は18年5月の爆破によって閉鎖した咸鏡北道吉州豊渓里(プンゲリ)核実験場の復旧作業を急いでおり、早ければ4月下旬にも核実験が可能だと、軍および情報当局は判断している。豊渓里実験場には4つの主坑道があるが、そのうちの3番目を短期間に復旧しようとしている。国連安保理北朝鮮制裁委の専門家パネルは20年9月に出した報告書で、豊渓里の核実験場は「坑道の入り口だけが破壊されたとみられる」とし、入り口さえ再建すれば容易に復旧可能だとの見解を表明していた。また、北朝鮮は国際社会の関心を豊渓里に集中させ、他の場所で意表をついて核実験を行う可能性も指摘されている。

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 水害で被害を受けた地方などもっと復旧させなければいけないところは山ほどだろうというごもっともな指摘はさておき、北朝鮮がもう一度核実験を行おうとしている事は確実だ。しかも入り口を壊しただけとのことであり、韓国でもう一度保守政権が誕生することを予見していたかのように思える。実際に北朝鮮は1月の政治局会議にて「われわれが先決的に、主導的に取った信頼構築措置を全面的に見直して、暫定中止していたすべての活動を再稼働する問題を、迅速に検討する」と語っており、いわゆる平和プロセスは一代限りのつもりだったのだろう。韓国では政権交代すると条約などが無かったことになるそうだが、これは北朝鮮も同じなのかもしれない。

3.北朝鮮は手詰まり

 これまで韓国をはじめとする国際社会は北朝鮮の核ミサイル開発には、国連における制裁を強化するするとともに独自の追加制裁も行って北朝鮮に圧力をかけ、翻意を促すことを基本としてきた。17年に北朝鮮がICBM「火星15」を発射した際、国連安保理は制裁決議2397号を採択した。同決議には追加のICBMが発射された際には、原油の供給をさらに制限することがうたわれていた。しかし、中国はこれにも反対している。国連安保理は北朝鮮によるICBM発射に対する追加制裁について話し合う緊急の公開会合を招集した。これまで北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する会合は非公開で行われており、公開会合は17年以来4年ぶりである。

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 しかし全くと言っていいほどうまくいっておらず、3月25日に開かれた国連安保理緊急会合では中国は「北朝鮮の合理的な憂慮を重視すべき」、ロシアも「追加制裁は容認しがたいレベルの人道主義的混乱を招く」と主張し全く纏まっていない。これ以上の制裁を下そうにも、既に最高強度の制裁が北朝鮮には下されているので不可能だ。とは言えロシアに関しては現在北朝鮮ほどではないにしろ経済制裁を受けており、北朝鮮を助ける余裕があるかどうかはかなり怪しい。この意味では北朝鮮を取り巻く情勢は格段に悪化しているだろう。

北朝鮮への追加制裁で 中国の協力は期待できない

 国連安保理で、中国はむしろ米国に責任を転嫁した。張軍国連大使は「21年初め、特に5月以降に米朝対話が膠着(こうちゃく)状態に陥り、非核化過程が停滞して朝鮮半島情勢に変数が多くなり、緊張が高まった。中国は、遺憾ながら関連国は『無条件の対話』というだけで、実際の行動を取ることも、北朝鮮の合理的懸念に答えることもなかった」と述べ、北朝鮮を擁護した。北朝鮮は今回、22個のタイヤを持つ移動式発射台からICBMを発射した。超大型の多軸トラックやミサイルの燃焼管を製造する炭素繊維、高強度アルミニウムなど核関連の部品はほぼ中国を通じて輸入しているという。中国が核とミサイル関連物資の北朝鮮への流入を約束通り統制していれば、北朝鮮のICBM発射はなかっただろう。中国は北朝鮮と「共犯」だと言わざるを得ない。共犯者の中国が北朝鮮の追加制裁に動くとは考えられない。

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 ロシアの経済が悪化したとはいえ北朝鮮には中国という頼れるタニマチがおり、それがこの期に及んでも国家が崩壊しない理由だろう。中国は北朝鮮を潰す気はさらさらなく、北朝鮮もそれをもって強気の姿勢を見せている。まあ、だからと言って中朝関係が常に蜜月であったかというとそういうわけでもないが、中国の緩衝地帯としての役割を存分に発揮している北朝鮮はいい駒であることに変わりはない。

対北朝鮮安保政策は3軸体制

 次期大統領の尹錫悦(ユン・ソクヨル)氏は、文在寅大統領の対北朝鮮姿勢を批判してきた。尹錫悦氏は「私は北朝鮮の好意のことを『平和ショー』とみている」「現政権はそれに没頭しすぎているため、国連の核関連の制裁も先制的に解除すべきだ」と批判してきた。尹錫悦氏は、北朝鮮の短距離弾道ミサイル発射に対して1月17日、フェイスブックに「わが国民を北朝鮮の核とミサイルの脅威から守るために、必要なあらゆる措置を講じる」とし、「何よりも有名無実となった『3軸体制』を早期に回復させ強化する」と約束した。韓国国防部は「2018年~22年国防中期計画」で北朝鮮の核・ミサイルに備えるための「韓国型3軸体制」の構築を20年代初めに繰り上げる方針を明らかにした。3軸体制は次の要素からなっている。

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 この三軸体制だが、第一の要素はキルチェーンと呼ばれる先制打撃能力である。ユン氏も「極超音速ミサイルで攻撃されれば、首都圏に到達する時間は1分以内であり、先制攻撃しか防ぐ方法は今のところない」と述べるように、日本がやろうとしているミサイルにミサイルをぶつけて撃ち落とすタイプの防衛システムは全く効果がないとのことだ。北朝鮮に対して韓国が出来ることは先制攻撃しかなく、それ故性能面で北朝鮮に劣っている事は致命的であると言える。第二の要素は韓国型ミサイル防衛システムだ。文大統領は中国の機嫌を取るためにTHAADの追加配備をかたくなに拒否していたが、ユン氏はどうやら導入に積極的とのことだ。ユン氏は対中関係を対日関係や対米関係ほどは重視していないそうなので、文大統領と異なり心置きなく追加配備できるだろう。第三の要素は北朝鮮の先制攻撃に対して稼働する大量反撃報復戦力だ。これによりもし首都圏が攻撃されたら即座に北朝鮮に対して壊滅的な打撃を与えられるのだが、元々ペンペン草すら生えないような惨状の北朝鮮に対してこの脅しがどこまで通用するかは分からない。

ユン氏は中国に妥協するのか

 尹錫悦氏は大統領選挙に先立つ1月30日、北朝鮮の中距離弾道ミサイル発射を受け、フェイスブックに「THAAD追加配備」と投稿。尹錫悦氏の選対本部は論評で「THAADの迎撃範囲は200kmなのに、発射台は6基にすぎず、基地が星州(ソンジュ)にあるため、韓国全域を防御することはできない」とTHAAD追加配備の必要性に言及していた。しかしながら、THAAD追加配備には中国の強硬な反対という壁がある。在韓米軍のTHAAD配備に対して、中国は強硬に撤回を要求し、強い経済的な報復を加えてきた。これに対し文在寅政権は、文在寅大統領が訪中する2カ月前に、「THAADを追加配備しない」「米国のミサイル防衛システム(MD)に参加しない」「日米韓同盟はしない」と表明した。これは「三不」といわれる原則である。韓国側は、これは「政府の考えを示したもので『約束』ではない」と強調してきたが、中国側は「約束だ」としてその順守を求めている。

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 ちなみにユン氏はこれに対して「中国との協定でも約束でもない。安保状況によって立場は変わり得る」と反故にするつもり満々である。政権交代で約束事をひっくり返すという事は韓国ではよくあることだったが、今回ばかりはこれに感謝しなければならない。しかしユン氏も中国に気を使っていないわけではなく、THAADを米軍が持ち込むという形ではなく、韓国軍が購入して使うというスタイルにするとのことだ。これはTHAADを米国が使うことによって中国国内の軍事情報が筒抜けにならないようにするものである。この辺りのギリギリの妥協はベテランの政治家でも難しいが、ユン氏は素人ながらそれなりに上手く折り合えそうだ。

米韓同盟のこれから

 尹錫悦氏は軍事面を含む日米韓の協力強化を韓国の安全保障の基軸として重視する構えである。尹錫悦氏は「南北関係を元に戻す。主従関係に転落した南北関係を正常化させる」と明言。米韓同盟を立て直し、北朝鮮の核ミサイルを無力化するため、米韓による「拡大抑止」を進める考えである。また、昨年11月の外国メディアとの会見では「北朝鮮が核武装を強化し挑発的なミサイル発射実験を続ける限り、韓米日による監視・偵察情報の共有と軍事協力をアップグレードするほかない」と述べている。北朝鮮の核ミサイルに対する有効な防衛策は韓国だけでは講じられない。そのためには米韓同盟の強化が不可欠であり、日米韓の協力体制も重要になってくる。

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 曲がりなりにも先進国の末席に加わっている韓国が世界でも有数の貧困国の北朝鮮に従うというのは傍から見ても不思議で歪なものであったが、ユン政権下では是正されるとのことだ。そのためにアメリカとの関係を強固なものにしていくとのことであり、ユン政権はオーソドックスな保守政権の路線を引き継ぐとみられる。この件についてアサン政策研究院のコ・ミョンヒョン選任研究委員は「バイデン政権は制裁の限界を認識しているため、北朝鮮のミサイル攻撃能力遮断のための監視・偵察体制および打撃手段を強化する形で、軍事的抑止力の強化に重点を置くはず」と語っている。対北政策においてはこれまでとは打って変わって米韓が噛み合っているが、それが上手くいくかは未知数だ。

今回は韓国の対北政策についてまとめた。

下記に纏めてある。

・北朝鮮は政権交代により韓国との合意を反故にしている。

・一方韓国も政権交代により中国との合意を反故にしている。

・ユン氏は北朝鮮に対しては強硬路線を敷くが、上手くいくかは未知数。

いかがだっただろうか? 核兵器以外はすべてポンコツの北朝鮮にこれまで韓国が言いなりになっていたあたり、いかに左派政権が腐敗していたかが窺える。また北への制裁を始めに強くしすぎたせいで逆に何も手が打てなくなっていることから、今回の対露制裁も順序を踏んでやらなければならないと感じた。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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