ウクライナと中国の関係

ウクライナ危機

現在国際情勢の中心となっているウクライナ情勢。ロシアはウクライナにアゾフ連隊たる組織があることを侵攻の理由の一つとしている。果たして真実はどうなのか。

・ロシア右翼VSウクライナ右翼

・毒を以て毒を制す?

・右翼にとってのウクライナ

・ウクライナ情勢は戦闘インターン

・ネオナチか否や

・アゾフ連隊の言い分

ロシア右翼VSウクライナ右翼

 アゾフは2014年、クリミア危機をきっかけに発足し、民兵としてロシア軍やロシア帝国運動と戦火を交えた経験を持ち、その頃から民間人の虐殺といった戦争犯罪がしばしば指摘されてきた(そのためロシアメディアではネオナチ、ファシストと呼ばれる)。現在でも自警組織として市中パトロールなどを行なっているが、その一方ではLGBTや少数民族ロマへの襲撃もしばしば行なってきた。それでも現在のウクライナ政府と密接な関係にあることから、その不法行為はほとんど問題にもされず、首都キエフにある本部はウクライナ政府さえ介入できない、いわば「白人右翼の聖地」の一つになっている。欧米諸国では2010年代後半から白人右翼によるテロや暴動が目立つようになったが、近年では取り締まりも強化されている。活動の場を求める白人右翼のなかには、混乱の続くウクライナや実戦経験の豊富なアゾフに惹きつけられる者も増えていて、例えば2019年NZクライストチャーチのモスクで51人を殺害したB.タラントもウクライナ行きを希望していた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220129-00279459

 もちろん実際にウクライナへと渡航する右翼も数多くおり、軍事衝突以前からアゾフの基地には世界各国からの右翼活動家で大繁盛していた。当然彼らはウクライナを観光してすぐに帰国するわけではなく、アゾフ基地でみっちりトレーニングを積んで鍛錬を受けていた。また世界各国から集まった右翼活動家たちとの交流も渡航目的の一つであり、そこで彼らは情報交換をしたり友情を育んだりした。右翼と言ったら民族主義者のイメージがかなり強い人もいるが、グローバル化の昨今においては右翼でも世界に進出しなければならないのである。まあ、似たようなことはロシアでも行われており、ロシアも「ロシア帝国運動」たる組織に参加するために渡航する右翼は後を絶たない。しかもそちらは実質的なプーチン政権の下部組織であり、活動内容や訓練もかなり洗練されている。(352字

毒をもって毒を制す?

 戦場の様子などもFacebookなどで発信し、欧米からも右翼活動家をリクルートするアゾフは、欧米での白人テロを誘発させかねない存在として危険視されている。実際、アメリカ議会は2015年、アゾフを「ネオナチの民兵」と位置付け、援助を禁じる法案を可決した。ところが2018年、国防総省からの圧力で議会は法案を修正し、それを皮切りに欧米はアゾフに軍事援助をしてきた。ジョージワシントン大学研究チームが昨年発表した報告書によると、アゾフやその下部団体のメンバーはアメリカをはじめ欧米諸国から訓練を受けており、なかにはイギリス王室メンバーも卒業生のサンドハースト王立陸軍士官学校に留学した者までいる。要するに、欧米はロシアを睨んでアゾフを手駒として利用しようとしているのだ。これこそ冷たい国際政治の現実であるが、欧米での右翼過激派の動向を考えれば、危険な賭けであることも確かだ。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220129-00279459

 記事にあるように一時期のアゾフ連隊はアメリカ政府からさえネオナチと言われるなど散々な言われ様だったが、ロシアとウクライナの緊張が高まるにつれてアメリカ政府は渋々支援するようになった。言ってしまえばヤクザの鉄砲玉である。しかしアゾフ連隊にとってはたとえ鉄砲玉扱いでもアメリカからの支援というのは嬉しかったようで、活動を活発化させた。当然先述したような右翼たちもどんどんウクライナ入りをし、一時期はロシア以上に右翼が入っていたとも言われている。(220字

右翼にとってのウクライナ

 なぜ白人過激派はわざわざウクライナを目指すのか。その最大の理由はウクライナが白人過激派のイデオロギーや陰謀論を満足させやすい土地だからだ。念のために確認しておくと、世界各国からウクライナに集まった白人過激派は、敵味方に分かれている。ウクライナには東部ドンバス地方の分離を目指す勢力と、これを阻止してウクライナの統一を維持しようとする勢力がある。このうち東部の分離派はロシアの支援を、統一派は欧米の支援をそれぞれ受けて戦闘を繰り広げてきたが、そのどちらにも白人過激派が外国人戦闘員として加わっているのだ。しかし、立場は違っていても、外国人戦闘員の多くは「CIA、メディア、ユダヤ人などを中心とする一部エリートが真実から市民の目をあざむき、世界を支配している」というQ-Anon的な陰謀論に感化されている点で共通する。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220214-00281814

 ロシアにもウクライナにも大規模な右翼組織があることは先述したが、今回の軍事侵攻には双方ともに関わっている。当然これらの右翼組織も敵味方に分かれて戦闘行為を行っているが、彼らの世界観や価値観はそこまで異なっていない。右翼活動家たちはサバイバルゲーム感覚で戦争に臨んでいるのである。彼らが一致しているのは「CIAやユダヤ人の陰謀」と戦うためにウクライナの戦闘に協力しているという考えであり、それはロシア・ウクライナ側共に変わっていない。特にウクライナ大統領のゼレンスキー氏はユダヤ人であり、彼らの理論を武装するには十分すぎる根拠となっている。ちなみにウクライナのアゾフ連隊に参加した右翼活動家たちはこの点についてどう折り合いをつけているのか。あるアゾフ連隊のメンバーはイギリスのガーディアン紙に対して「我々はロシアの愛国者にもロシアにも遺恨はない。だが、プーチンはユダヤ人なんだ」と語っている。プーチン大統領が実際にユダヤ人かどうかはさておき、少なくとも親玉のゼレンスキー大統領は自他ともに認めるユダヤ人なのだが、その件については意図的に目を瞑っていることが窺える。

ウクライナ情勢は戦闘インターン

 一方、同じく陰謀論に感化されていても、やや異なる経路で外国人戦闘員になる者もある。自分の出身国での軍事活動を見すえて、実戦経験を積むためにウクライナにやってくる者たちだ。2019年にドンバスに入り、統一派の外国人戦闘員になったバージニア出身の20歳の若者は、米ヴァイスの取材に「ザ・ベース(The Base)の一員としてここにきた」と認めている。ザ・ベースはアメリカの極右団体だが、黒人などを排除し、「CIAやユダヤ人に握られる現体制」を打倒するための軍事訓練を呼びかけている点に特徴があり、ワシントン州などに広大な射撃訓練場を保有している。その危険性からイギリスやカナダですでに「テロ組織」に指定されているが、アメリカでは規制されておらず、近年ではオーストラリアなどでも訓練を行なっている。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220214-00281814

 戦闘経験が積みたいならそれこそ世界各国の戦地に行けばいいのだが、どうやら彼らは白人世界というものに強いこだわりを持っているのでそうはいかないのである。北アイルランド問題も片付き、ユーゴスラビアの情勢も落ち着いた現在では、白人世界で戦争が行われているのはロシアとウクライナくらいである。言うまでもなく実戦経験を積んで一回りも二回りもパワーアップした彼らが本国に帰ったら、これまでのテロ以前に厄介な事はこの上ない。実際に1980年代にソ連がアフガニスタンに侵攻したとき、イスラム教の国から大量の義勇兵が集まり、彼らの活躍もあってアフガニスタンからソ連軍を追い出すことに成功した。その後彼らのうちアフガンに残って戦後復興に務めたものはタリバンとなり、帰国して各々のジハードを続けると誓ったものはアルカイダとなった。ウクライナ情勢後もこれと同じような展開になりそうな気がしてならない。(385字

ネオナチか否や

念のために確認すると、「ネオナチのウクライナ政府」というロシアの言い分は、誇張があるとしても事実から遠くない(ロシアの肩を持つわけではないと断っておく)。民主的な選挙により、2019年に就任した現在のゼレンスキー大統領は、人種差別的でも極右的でもない。しかし、ウクライナでは2014年以来、極右勢力が大きな政治的影響力をもってきた。その転機は、2014年のクリミア危機にあった。「ロシアの侵略に対抗する」ことを強調し、民兵として軍事作戦に参加する極右団体が相次いで発足したのだ。そのなかでも最大勢力であるアゾフ連隊は、クリミア危機後も「自警団」として市中をパトロールするかたわら、政府に批判的な者や、LGBTやロマ(ジプシー)といった少数者をしばしば襲撃してきた。

https://news.yahoo.co.jp/byline/mutsujishoji/20220227-00284133

ちなみにウクライナ政府はこの件については見て見ぬふりをしており、アゾフ連隊は大手を振るって活動していたのは語るまでも無いだろう。2019年の大統領選にて反露強硬派のポロシェンコが落選し、代わって比較的ロシアに対しては宥和的だったゼレンスキーが大統領になると、ウクライナ政府からのアゾフ連隊に対する風当たりも少しずつ強まっていった。しかしロシアの脅威が高まるにつれ欧米諸国はアゾフ連隊を支援するようになり、自国政府からの圧力はそこまで苦にはならなくなった。にもかかわらず「国際ヘイトグループ」という枠組みからは未だに外していないあたりに欧米の闇が垣間見える。

アゾフ連隊の言い分

(「アゾフ連隊」マクシム・ゾリン司令官)

「ナショナリストといえば、国によっては過激な印象を持たれています。他の国でいうような“極右”や人種差別などはここにはありません。そんなものに誰も関心がないのです。アゾフのナショナリズムは唯一、国を守るということだけです」アゾフ連隊の隊員の多くは「ナショナリストだがネオナチではない」と主張しました。

(軍事ジャーナリスト 黒井文太郎さん)

「(アゾフに)もともと多かったメンバーは地元のサッカーファンだった。ヨーロッパでサッカー関係のフーリガンはどちらかというと極右思想が多かった。反ロシア感情は他の部隊より元々は強い。そういう意味では戦闘意識が高いが、正式に国家親衛隊に入っていますので、ひとりひとりの思想まではわからないが、隊として極右活動はしていない。ネオナチという言葉はどちらかというとロシア側が、いわゆる反ロシア勢力に対して使うレッテル張りなので、(アゾフは)いわゆる極右ではあるが、『ネオナチ』とは今は言えないと思う」

https://news.yahoo.co.jp/articles/a7903f419f78f4a2208fa16fc532f50282198204

 それに対してアゾフ連隊側は、自分たちは極右ではなく、もちろんネオナチでもないと語っている。まあ、自分自身の事をネオナチだと自覚した上で名乗っているほどの過激派は欧米の中でもごく少数であるが、どこまでが真相なのかは不透明だ。また軍事ジャーナリストの黒井氏はアゾフ連隊が極右であると語っており、客観的に見れば相当の極右組織であることが窺える。

今回はアゾフ連隊と右翼活動家についてまとめた。

下記に纏めてある。

・近年のロシアとウクライナは右翼活動家たちのたまり場。

・アメリカ政府はロシアに対抗するためにアゾフ連隊を支援してきた。

・ウクライナ情勢に対して右翼活動家は敵味方の右翼について戦争に従事している。

・中には戦闘経験を積むために従軍している右翼活動家もいる。

・アゾフ連隊はポロシェンコ政権が育てて、アメリカ政府が飼いならしている。

いかがだっただろうか? ウクライナが右翼活動家のたまり場になっているあたり、今回のウクライナ情勢で政府以外の団体はやけに前のめりになっている理由が少しわかった気がする。また元々ロシア寄りと言われていたゼレンスキー大統領ですらアゾフ連隊を何とかできなかったあたり、影響力の強さが窺える。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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